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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁

青空文庫

大学は農科へ入学して、農芸化学を修めていたが、そのうちにはげしい神経衰弱にかかって学校を休学した。それきりどうしても再び出ようとは言わなかったのを、私が留学から帰った時に無理にすすめて出る事にはなったが、それでもやはり学校は欠席がちであった。

そのころは私はもう青年ではなかった。空想から現実の世界へ踏み込んで、功名心にかられて懸命に努力し、あくせくしていた。そうして亮の学校をなまける心持ちには共鳴し難くなっていた。私の目から見るとただ自分の心の中へ中へと引っ込んで行く亮を、どうでも引き立てて外側へ向け直してやる事が自分の務めのように思っていたので、機会あるごとに口をすくして説法のような事を聞かせた。

その当時の亮の日記のようなものを見ていると、こんな一節がある。

「明治四十四年十一月二十八日――昨日青山の宿から本郷の下宿へ移った。朝押し入れから蒲団や行李を引き出して荷造りをしている間にも、宿を移ったとて私はどうなるだろうと思う。叔父さんや弟は、宿でも変えて気分を新たにしたら学校へ行けるような心持ちになるだろうという。私は学校のほうへ一歩も向かう勇気はもうない。