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えいがじだい
寺田寅彦随筆集 第二巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁
納戸のすみの薄暗い所へいつかの行李を置いてその中に寝かせ、そしてそろそろ腹をなでてやるとはげしく咽喉を鳴らして喜んだそうである、そしてまもなく安々と四匹の子猫を分娩した。
人間のこしらえてやった寝床ではどうしても安心ができないと見えて、母猫はいつのまにか納戸の高い棚の奥に四匹をくわえ込んだ。子供らはいくら止めても聞かないで、高い踏み台を持ち出してそれをのぞきに行くのであった。私はなんとはなしにチェホフの小品にある子猫と子供の話を思い浮かべて、あまりきびしくそれをとがめる気にもなれなかった。
子猫の目のあきかかるころになってから、時々棚の上からおろして畳の上をはい回らせた。そういう時は家内じゅうのものが寄り集まってこの大きな奇蹟を環視した。そのような事を繰り返す日ごと日ごとに、おぼつかない足のはこびが確かになって行くのが目に立って見えた。単純な感覚の集合から経験と知識が構成されて行く道筋はおそらく人間の赤子の場合と似たものではあるまいかと思われた。そしてその進歩が人間に比べて驚くべく急速である事も拒み難い。このように知能の漸近線の近い動物のほうが、それの遠い人間に比べてそれに近づく速度の早いという事実はかなり注意すべき事だと思ったりした。