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えいがじだい

寺田寅彦随筆集 第二巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第二巻(えいがじだい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 207,099 字 · 419 頁

青空文庫

こんな幼稚なものでも当時の子供に与えた驚異の感じは、おそらくはラジオやトーキーが現代の少年に与えるものよりもあるいはむしろ数等大きかったであろう。一から見た十は十倍であるが、百から見た同じ十はわずかに十分の一だからである。今の子供はあまりに新しい驚異に対して麻痺させられているような気がある。

活動写真を始めて見たのはたぶん明治三十年代であったかと思う。夏休みに帰省中、鏡川原の納涼場で、見すぼらしい蓆囲いの小屋掛けの中でであった。おりから驟雨のあとで場内の片すみには川水がピタピタあふれ込んでいた。映画はあひる泥坊を追っかけるといったようなたわいないものであったが、これも「見るまでは信じられなくて、見れば驚くと同時に、やがては当然になる」種類の経験であった。ともかくも、始めて幻燈を見たときほどには驚かなかったようである。

明治四十一年から三年までの滞欧中には、だれもと同様によく活動を見たものである。当時ベルリンではこれを俗にキーントップと言っていた。常設館はいくつもあったがみんな小さなものでわずかの観客しか容れなかったように覚えている。邦楽座や武蔵野館のようなものはどこにもなかったようである。