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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁
見るだけで自分の背中がむずむずするようであった。なんのためにわざわざこんないやなことをするのか了解できなかった。十二三歳のころ病身であったために、とうとう「ちりけ」のほかに五つ六つ肩のうしろの背骨の両側にやけどの跡をつけられてしまった。なんでもいろいろのごほうびの交換条件で納得させられたものらしい。
大学の二年の終わりに病気をして一年休学していた間に「片はしご」というのをおろしてくれたのが近所の国語の先生の奥さんであった。家伝の名灸でその秘密をこの年取った奥さんが伝えていたのである。なんでも紙撚だったか藁きれだったか忘れたが、それでからだのほうぼうの寸法を計って、それから割り出して灸穴をきめるのであるが、とにかく脊柱のたぶん右側に上から下まで、首筋から尾骨までたしか十五六ほどの灸穴を決定する。それに、はじめは一度に三つずつ一週間後から五つずつというふうにだんだんすえる数を増して行って、おしまいには二十ぐらいずつすえるのである。なかなかここいらは合理的である。
上から下へだんだんにすえて行くと痛さの種類がだんだんに少しずつ変わって行くのが妙である。