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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁

青空文庫

それだけにこのトリックは成効したものと思われた。

この映画を見ているうちに自分にはいろいろの瑣末な疑問がおこった。

第一には、この「透明人間」という訳語が原名の「インヴィジブル・マン」(不可視人間)に相当していないではないかという疑いであった。

「透明」と「不可視」とは物理学的にだいぶ意味がちがう。たとえば極上等のダイアモンドや水晶はほとんど透明である。しかし決して不可視ではない。それどころか、たとえ小粒でも適当な形に加工彫琢したものは燦然として遠くからでも「視える」のである。これはこれらの物質がその周囲の空気と光学的密度を異にしているためにその境界面で光線を反射し屈折するからであって、たとえその物質中を通過する間に光のエネルギーが少しも吸収されず、すなわち完全に「透明」であっても立派に明白に顕著に「見える」ことには間違いなく、見えないわけにはどうしてもゆかないのである。

反対に不透明なものでもそれが他の不透明なものの中に包まれていれば外からは「不可視」である。

こう考えてみると「透明人間」という訳語が不適当なことだけは明白なようである。

そこで、次に起こった問題はほんとうに不可視な人間ができうるかどうかということであった。