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あひるとさる
寺田寅彦随筆集 第五巻
寺田 寅彦
線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁
こんな所でも蠅が多い。峰の茶屋で生まれたのが人間に付いて登って来たものであろうか。焦げ灰色をした蝶が飛んでいる。砂の上をはっている甲虫で頭が黒くて羽の煉瓦色をしているのも二三匹見かけた。コメススキや白山女郎花の花咲く砂原の上に大きな豌豆ぐらいの粒が十ぐらいずつかたまってころがっている。蕈の類かと思って二つに割ってみたら何か草食獣の糞らしく中はほとんど植物の繊維ばかりでつまっている。同じようなのでまた直径が一倍半くらい大きいのがそろって集団をなしている。
この二種の糞を拾って行って老測夫に鑑定してもらったらどちらもうさぎの糞で、小さいのは子うさぎ、大きいのは親うさぎのだという。さすがに父だか母だかは糞ではわからないらしい。このうさぎを捕獲すればテント内の晩餐をにぎわすことができるがなかなか容易には捕れないそうである。出歩く道がわかればわなを掛けるといいそうであるがその道がなかなかわからないと言う。それはとにかく、こんなはげ山の頂にうさぎが何を求めて歩いているのか、また蜘蛛や甲虫や蝶などといかなる「社会」を作っているのか愚かな人間には想像がつかないのである。