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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁

青空文庫

それらが表面上は単なる音韻的な連鎖として用いられ、悪く言えば単なる言葉の遊戯であるかのごとき観を呈しているにかかわらず、実際の効果においては枕詞の役目が決して地口やパンのそれでないことは多くの日本人の疑わないところである。しかしそれが何ゆえにそうであるかの説明は容易でない。私のひそかに考えているところでは、枕詞がよび起こす連想の世界があらかじめ一つの舞台装置を展開してやがてその前に演出さるべき主観の活躍に適当な環境を組み立てるという役目をするのではないかと思われる。換言すればある特殊な雰囲気をよび出すための呪文のような効果を示すのではないかと思われる。しかし、この呪文は日本人のごとき特異な自然観の所有者に対してのみ有効な呪文である。自然を論理的科学的な立場から見ることのみを知ってそれ以外の見方をすることの可能性に心づかない民族にとっては、それは全くのナンセンスであり悪趣味でさえもありうるのである。

こんなことを考えただけでも、和歌を外国語に翻訳しただけで外国人に味わわせようという試みがいかに望み少ないものであるかを了解することができるであろう。また季題なしの新俳句を製造しようとするような運動がいかに人工的なものであるかを悟ることができるであろうと思われる。