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あひるとさる

寺田寅彦随筆集 第五巻

寺田 寅彦

線上閱讀寺田 寅彦《寺田寅彦随筆集 第五巻(あひるとさる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 194,515 字 · 389 頁

青空文庫

が、その責任を負わされる先生も土地の人も誠に珍しい災難に会ったのだというふうに考えられないこともないわけである。

こういう災難に会った人を、第三者の立場から見て事後にとがめ立てするほどやさしいことはないが、それならばとがめる人がはたして自分でそういう種類の災難に会わないだけの用意が完全に周到にできているかというと、必ずしもそうではないのである。

早い話が、平生地震の研究に関係している人間の目から見ると、日本の国土全体が一つのつり橋の上にかかっているようなもので、しかも、そのつり橋の鋼索があすにも断たれるかもしれないというかなりな可能性を前に控えているような気がしないわけには行かない。来年にもあるいはあすにも、宝永四年または安政元年のような大規模な広区域地震が突発すれば、箱根のつり橋の墜落とは少しばかり桁数のちがった損害を国民国家全体が背負わされなければならないわけである。

つり橋の場合と地震の場合とはもちろん話がちがう。つり橋はおおぜいでのっからなければ落ちないであろうし、また断えず補強工事を怠らなければ安全であろうが、地震のほうは人間の注意不注意には無関係に、起こるものなら起こるであろう。