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あきかぜとはは

尾崎士郎短篇集

尾崎 士郎

線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁

青空文庫

と庭の方から呶鳴る声が聞えた。私は寝台から飛び起きるとすぐにラジオのそばへ駈けつけていった。戦闘はこの日(十二月八日)の午前中、早くも広大な範囲において展開されているらしい。ラジオをかこんで、みんな鈴なりになっている。緊張したアナウンサーの声で、何か叫んでいる様子だったが、どこかで妨害されているらしく嵐のような唸り声だけが耳の底にまつわりついてきた。

「やりましたね、いよいよ」

廊下で伊吹と顔を合せると、それきりでものがいえなかった。もう一度自分の部屋を見ておこうという気持に唆しかけられて、扉をあけるとボーイの笹尾が私のうしろに立っている。

その日の正午までに女たちだけを此処に残して男は全部事務所に集合することになっているのだ。平素は顔さえ見れば冗談口を敲きあっている間柄でありながら、何かいおうと思っても舌が硬ばって言葉が出なかった。本棚の真上に額におさめた御真影がかけてある。私はその前に立って無意識に最敬礼をしてから額をはずし、それを恭々しく抱えて庭へおりていった。

「どうするんです?」

呼びかける笹尾の声に微笑を含んだ視線をチラッと投げただけで、私はもう一度御真影を捧げ、マッチをすって、積みかさねてある木片に火をつけた。