輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
マドロスパイプをくわえた彼の口からはゆるやかな煙が、ほのかな夢のように立ちのぼっていた。
老人は、黙って私の前を通り過ぎていった。彼は私の焦燥に対して一瞥を投げようともしなかったが、しかし、彼のうしろ姿が暗い扉のかげに消えていったとき、私の心は急に新しい昂奮に駆り立てられた。私は自分の部屋に入り、カンプベッドの上に腰をおろした。それから立ち上って電灯のスイッチをひねった。真暗な部屋の中で自分の吐く息が冷たい大気の中に溶けてゆくのを見た。すると何かしら自分の心の底に神秘な幻想の世界がひろがってゆくという感じを避けることができなくなった。妙に息苦しく――それにもかかわらず静かな昂奮の中で、私はあの老人と自分とをつないでいる眼に見えないきずなを感じないではいられなくなったのだ。彼は人生に対してすべての要求を失ってしまっている。だから若し彼の存在が人生の現実に何等かの関わりを持っているとすれば、それは陽の照りつけた午後の街に高い建物の影が映っているようなものではないか。彼の前にはすべての現実が過去の回想の中に横たわっているよりも以上に少しも新しいものでなくなってしまっているからだ。