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あきかぜとはは
尾崎士郎短篇集
尾崎 士郎
線上閱讀尾崎 士郎《尾崎士郎短篇集(あきかぜとはは)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 108,032 字 · 216 頁
やがて、彼の眼の前を雌と雄の二匹の河鹿が、胸をぺったりと吸いつけて下流の方へ流れていった。次の一組が現われた。そして、あとからあとからと同じ恰好をした二匹の河鹿が、頭だけを二つの流れの上に擡げるようにして下流の闇の中へかくれてゆく。絶え間なしに続いてゆく河鹿の行列を眺めているうちに緒方新樹は妙に心が晴ればれとしてきた。彼は酔っぱらったようにごろりと砂原の上に横になり、低い声で唄をうたいはじめた。彼の頭の上には星のうかんだ空がひろがっていた、彼は自分の唄う声が川波の音の中に消えてゆくのにじっと耳を澄ませながら、自分の心は今、非常に荘厳な何ものかに当面しているのだ、という気持になった。すると、彼の幻想の中で河鹿の行列のあとから、妻の身体をうしろから抱きすくめて悠揚として流れて行く自分の姿が神々しいもののように描きだされてきたのである。