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やねうらのさんぽしゃ

屋根裏の散歩者

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《屋根裏の散歩者(やねうらのさんぽしゃ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 28,862 字 · 57 頁

青空文庫

押入れから出た洋服姿の明智が、ニコニコしながらいうのです。「一寸君の真似をして見たのだよ」

それは実に、幽霊なぞよりはもっと現実的な、一層恐ろしい事実でした。明智はきっと、何もかも悟って了ったのに相違ありません。

その時の三郎の心持は、実に何とも形容の出来ないものでした。あらゆる事柄が、頭の中で風車の様に旋転して、いっそ何も思うことがない時と同じ様に、ただボンヤリとして、明智の顔を見つめている外はないのです。

「早速だが、これは君のシャツの釦だろうね」

明智は、如何にも事務的な調子で始めました。手には小さな貝釦を持って、それを三郎の目の前につき出しながら、

「外の下宿人達も調べて見たけれども、誰もこんな釦をなくしているものはないのだ。アア、そのシャツのだね。ソラ、二番目の釦がとれているじゃないか」

ハッと思って、胸を見ると、成程、釦が一つとれています。三郎は、それがいつとれたのやら、少しも気がつかないでいたのです。

「形も同じだし、間違いないね、ところで、この釦をどこで拾ったと思う。天井裏なんだよ、それも、あの遠藤君の部屋の上でだよ」

それにしても、三郎はどうして、釦なぞを落して、気附かないでいたのでしょう。