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やまのこんじゃく

山の今昔

木暮 理太郎

線上閱讀木暮 理太郎《山の今昔(やまのこんじゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,554 字 · 42 頁

青空文庫

此の峠が旅人のみならず登山者にも大なる便益を与えたことは言うに及ばないことである。

何時の頃にか炭焼や杣又は岩茸採りなどが一年中の或期間、部落民の間に生業として営まれるようになった。それは他所から来た人に教えられたか、部落の或者が里に出て覚えたか、或は偶然の機会が基であったか、若しくはそのすべてであったか、孰れにしてもそうなる迄には、其間に経済的原因や事情があったろう、それらの関係を知ることは容易ではない。ともあれ茲では夫に就て記述するのが目的ではないから、其探究は他日に譲ることとして、そういう人達が登山に関係が有ったか否かを知ればよい。私の考える所では、我国に於ける高山の多くが其開祖と仰がれる信念堅固な高徳の僧侶に依りて登られているが、記録の上には現れていないにしても、其蔭にはこういう人々が働いていたことを想像しても謬ではあるまいと信ずる。それはたとえば、余りにも近代の例ではあるが、天明五年に覚明行者が御岳の黒沢口を開いた時にも、藪原の杣長九郎等十三人の労力奉仕があり、文政十一年に播隆上人が槍ヶ岳の初登山を行った際にも、亦幾人かの労力奉仕者があったことなどから類推されるのである。