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ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ)
山の憶い出 上
木暮 理太郎
線上閱讀木暮 理太郎《山の憶い出 上(ふえふきがわのじょうりゅう(ひがしさわとにしさわ))》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 284,014 字 · 565 頁
ものである。水量は左瀑よりも多いかと思われた。これが若し大雨の後であったならば、奔放の勢は反て左瀑に勝るものがあろう。両門ノ瀑という名のあることは後に冠君から聞いた。
大釜の向う側こそ絶壁であるが、其他に人を威嚇する何等の道具建てがないのは実に幸である。若し両岸に一丈近くの絶壁が四、五十間も続いていたならば、単に夫だけで私達は此奇景を飽まで嘆賞した後、悄然として帰途に就くより外に方法はなかったであろう。勿論左の谷を登ることは容易に行われそうもないが、本流と思われる右の沢は大釜の手前の浅い所を徒渉して左岸に移ると、其処に大石を積み重ねて足場のようなものが造ってあり、人の蹈んだらしい跡がある。何処か登り口はないかと夫となくあたりを見廻していた二人の眼は、期せずして其処に止った。あれを登れば大丈夫行けると目当が付いたので、安心して荷を卸した儘十五分許り休憩した。
八時二十分出発して右の瀑の上を右岸に移る。足跡は何時か消え失せて、これから甲武信岳の頂上に達するまで遂にそれらしいものに出遇わなかった。其時は別に注意して確めもしなかったが、察する所これは水止から南方に派出している尾根を上下する為のものであるらしい。