輕讀日語

輕鬆讀懂日語經典作品

ja-reading.com

輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。

ざきょうにあらず

座興に非ず

太宰 治

線上閱讀太宰 治《座興に非ず(ざきょうにあらず)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 1,872 字 · 4 頁

青空文庫

娘も、親爺も、青年も、全く生気を失って、ぼんやりベンチに腰をおろして、鈍く開いた濁った眼で、一たいどこを見ているのか。宙の幻花を追っている。走馬燈のように、色々の顔が、色々の失敗の歴史絵巻が、宙に展開しているのであろう。

私は立って、待合室から逃げる。改札口のほうへ歩く。七時五分着、急行列車がいまプラットホームにはいったばかりのところで、黒色の蟻が、押し合い、へし合い、あるいはころころころげ込むように、改札口めがけて殺到する。手にトランク。バスケットも、ちらほら見える。ああ、信玄袋というものもこの世にまだ在った。故郷を追われて来たというのか。

青年たちは、なかなかおしゃれである。そうして例外なく緊張にわくわくしている。可哀想だ。無智だ。親爺と喧嘩して飛び出して来たのだろう。ばかめ。

私は、ひとりの青年に目をつけた。映画で覚えたのか煙草の吸いかたが、なかなか気取っている。外国の役者の真似にちがいない。小型のトランク一つさげて、改札口を出ると、屹っと片方の眉をあげて、あたりを見廻す。いよいよ役者の真似である。洋服も、襟が広くおそろしく派手な格子縞であって、ズボンは、あくまでも長く、首から下は、すぐズボンの観がある。