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かげ

影

芥川 竜之介

線上閱讀芥川 竜之介《影(かげ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 10,337 字 · 21 頁

青空文庫

その後には、――また長い沈黙があった。

その沈黙はたちまち絞め木のように、色を失った陳の額へ、冷たい脂汗を絞り出した。彼はわなわな震える手に、戸のノッブを探り当てた。が、戸に錠の下りている事は、すぐにそのノッブが教えてくれた。

すると今度は櫛かピンかが、突然ばたりと落ちる音が聞えた。しかしそれを拾い上げる音は、いくら耳を澄ましていても、なぜか陳には聞えなかった。

こう云う物音は一つ一つ、文字通り陳の心臓を打った。陳はその度に身を震わせながら、それでも耳だけは剛情にも、じっと寝室の戸へ押しつけていた。しかし彼の興奮が極度に達している事は、時々彼があたりへ投げる、気違いじみた視線にも明かであった。

苦しい何秒かが過ぎた後、戸の向うからはかすかながら、ため息をつく声が聞えて来た。と思うとすぐに寝台の上へも、誰かが静に上ったようであった。

もしこんな状態が、もう一分続いたなら、陳は戸の前に立ちすくんだまま、失心してしまったかも知れなかった。が、この時戸から洩れる蜘蛛の糸ほどの朧げな光が、天啓のように彼の眼を捉えた。陳は咄嗟に床へ這うと、ノッブの下にある鍵穴から、食い入るような視線を室内へ送った。