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おはぎとななくさがゆ
御萩と七種粥
河上 肇
線上閱讀河上 肇《御萩と七種粥(おはぎとななくさがゆ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 11,614 字 · 23 頁
偶然にもそれは青楓氏の邸宅と、歩いて十数分の近距離にあった。何年か前に京都を引払って東京に移り、一時はプロレタリア芸術を標榜して洋画塾を開いていた青楓氏は、その頃もはや日本画専門となられ、以前からのアトリエも売ってしまい、新たに日本式の家屋を買い取って、住んで居られた。それは宏荘とまでは行かずとも、相当の構えの家であり、もちろん私の借家とは雲泥の差があった。
出獄後半年たつと、昭和十三年になり、私は久振りに自分の家庭で新春を迎える喜びを有ち得たが、丁度その時、正月七日の朝のことである、青楓氏が自分のうちで書初めをしないかと誘いに来られた。私はかねてからの獄中での空想が漸く実現されるのを喜んで、すぐに附いて行った。
二階の二間つづきの座敷が青楓氏の画室になっていた。二人はそこで絵を描いたり字を書いたりして見た。しかしそれは、私の予期に反し、獄中で空想していたほど楽しいものではなかった。何と云うことなしに索然たるものがあって、二人とも興に乗ることが出来なかった。時は過ぎ人は老いた、あの時の夢はやはり二度とは見られませんね、私は思わずそんなことを言って見たりした。