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おうまじるしはいしゃく

御馬印拝借

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《御馬印拝借(おうまじるしはいしゃく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N1,點詞查義。

N1 · 挑戰 · 新字新假名 · 21,483 字 · 43 頁

青空文庫

七

筈だ、信夫にはできなかった、かなしいほど憐れみの情のふかい、あわれなほども温かいやさしい信夫には、それができなかったのである、「……信夫」源七郎は美しく星のきらめく空をふり仰ぎ、しずかに口の内で呟いた、「よくはいと云った、それがおまえにはいちばん似合っている、不始末ではない、それでよかったんだ、……虎之助の申込みもひとすじで美しい、これでいい、なにも悲しむことはないじゃないか、おれはよろこんで、あれに鏡を譲るよ……」

七

半刻ほどして望楼から下りた源七郎はすっかりおちついていた。かれはすぐ三村勘兵衛に宛てて手紙を書いた、それから牡丹の鏡をかたく包にして、いっしょに荷役の宰領に託した。……かれらが山を下りていったのは夜明け前のことだった、このあいだに兵たちは矢弾丸の荷を解き、糧食を倉へ運び入れていた、みんな活き活きと元気になり、つきあげてくる闘志を抑えかねるもののように、なにやら喚いては叱られるが、すぐにまた好きなことを呶鳴ったり叫んだりしていた。

六月十六日の夕刻、源七郎は河津虎之助を呼んで一通の書状をわたし、――これを持って掛川城へゆけと命じた、「日が昏れたら