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ふくいんさつじんじけん

復員殺人事件

坂口 安吾

線上閱讀坂口 安吾《復員殺人事件(ふくいんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 96,621 字 · 195 頁

青空文庫

捜査主任は、発見して連行した刑事をよんで、

「滝沢は一人だったのか」

「ハ、一人でした」

「何時の汽車だい」

「三時五十分着、下り列車から降りました。東京からの切符を持っていました」

「その列車から降りたのはマチガイないな」

「たしかにマチガイありません。汽車から降りるところを発見したのですから」

「イヤ御苦労」

捜査主任は倉田組へ張りこんでいる一隊にレンラクして、情報をもとめていたが、

「こッちは全然変ったことがありません。朝から、相変らず一隻も船が戻ってきませんし、特別の来訪者もありません。倉庫や目ぼしい戸棚はみんな封印して、武装警官が見張りに立っていますが、事務員は平静で、不穏な空気はありません」

という返事であった。

「それじゃア、夕食前に滝沢を訊問してみるか。え、三村。どんな男だい。滝沢三次郎は」

「これはシタタカな奴ですよ。泥をはくような先生じゃありませんな。よッぽど確かな証拠をつきつけない限りは、何をきいたってムダでしょうよ。夫ア、ムダに腹をへらすだけがオチですな。もっとも、夕飯がまずくなるかも知れませんや」

「とにかく、よんでこいよ」

連れられてきた滝沢三次郎は、意外に柔和そうな好男子であった。