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しんりしけんをよむ

『心理試験』を読む

平林 初之輔

線上閱讀平林 初之輔《『心理試験』を読む(しんりしけんをよむ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 2,253 字 · 5 頁

青空文庫

探偵小説の類は、西洋でもいわゆる「軽い読物」として、文学上には大した地位を占めていないのが普通である。戦後に書かれた二三冊のフランス文学史を開いてみても、私はモーリス・ルヴェルの名前すら発見することができなかった。探偵小説の本場である英米においても恐らく同じであろうと思う。ウェルズや、チェスタトンやハガードなどは別として、純粋の探偵小説家で、いわゆる「文壇」に重きをなしている人はほとんどなかろうと思う。

それには色々な理由があるであろうが、作者自身が「肩の凝らぬ読み物」を書くのだということに、一種責任が軽くなったような感じをもって、自分で求めて文学界に特殊の一郭を形づくって満足していたせいもあるであろう。

けれどもすべての文化の進化がそうであるように、文学もますます細かく分化してゆくと同様に、ますます広範な範囲に総合されてゆく。ちょうど、科学界において、細かい発見が年と共に付加されてゆくと同時に、より一般的な原理によりてこれが包括的に説明されてゆくのと同じである。古典時代の文学と二十世紀の文学とを比較してみれば、そのことは一目でわかる。前者においては文学の領域は極めて単純で、ほとんど韻文に限られていたがその韻文がいかに細々しい形式に別れていたことであろう。