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かいそう
快走
岡本 かの子
線上閱讀岡本 かの子《快走(かいそう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,273 字 · 11 頁
中の間で道子は弟の準二の正月着物を縫い終って、今度は兄の陸郎の分を縫いかけていた。
「それおやじのかい」
離れから廊下を歩いて来た陸郎は、通りすがりにちらと横目に見て訊いた。
「兄さんのよ。これから兄さんも会社以外はなるべく和服で済ますのよ」
道子は顔も上げないで、忙がしそうに縫い進みながら言った。
「国策の線に添ってというのだね」
「だから、着物の縫い直しや新調にこの頃は一日中大変よ」
「はははははは、一人で忙がしがってら、だがね、断って置くが、銀ぶらなぞに出かけるとき、俺は和服なんか着ないよ」
そう言ってさっさと廊下を歩いて行く兄の後姿を、道子は顔を上げてじっと見ていたが、ほーっと吐息をついて縫い物を畳の上に置いた。すると急に屈托して来て、大きな脊伸びをした。肩が凝って、坐り続けた両腿がだるく張った感じだった。道子は立上って廊下を歩き出した。そのまま玄関で下駄を履くと、冬晴れの午後の戸外へ出てみた。
陽は既に西に遠退いて、西の空を薄桃色に燃え立たせ、眼の前のまばらに立つ住宅は影絵のように黝ずんで見えていた。道子は光りを求めて進むように、住宅街を突っ切って空の開けた多摩川脇の草原に出た。