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しそうとふうぞく

思想と風俗

戸坂 潤

線上閱讀戸坂 潤《思想と風俗(しそうとふうぞく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 216,700 字 · 422 頁

青空文庫

思想と風俗

戸坂潤

序

思想というものは、その持ち主の身につけば、その持主の好みのようなものにまでもなるものだ。意識とも良心ともモラルとも云っていいものになる。そして同じ時代の同じ社会に活きている沢山の人間達の間に、共通する好みの類が、風俗をなすのである。

ファッションやモードと云っても、それはただの伊達ごとではなくて、それとなく、時代やジェネレーションや又社会階級の、世界観を象徴しているものなのだ。だから吾々は又、世の中の風俗の褶や歪みや蠢きから、時代の夫々の思想の呼吸と動きとを、敏感に抽出することも出来るわけである。

思想は風俗の形を取ることによって、社会に於ける肉体的なリアリティーを有つことが出来る。だが風俗はあくまで、社会というものの皮膚と云うべきものに相当するのが特色である。風俗はつまり社会の現象であって、その内部的な機構ではない。そこで社会現象の批評は、時には風俗批評とも云われるのである。けれども風俗の裏には、常に思想があるのだ。

私はまず初めに、思想と風俗とのこうした交流の経緯を、独自な題材として考察して見た。それが第一部「風俗」