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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁

青空文庫

ああいう話を俺らに聞かせておいて、こんな場合に、味方になってくれと謎をかけたんだ。それに違えねえ。……つづけざまにあんな目に逢わされりゃア誰だって悪党にならア。……三国峠の権、根は善人とも!)

谷の方から竹法螺の音が聞こえたので、捕り方たちは、三国峠の権が捕えられたと思ったのだろう、屋内や木蔭などから走り出し、谷を目ざして走って行った。と、その隙を狙い、五人の手下に護られた三国峠の権が、谷とは反対の、山の方へ遁がれて行くのが見られた。一刻も早く姿を隠さなければならなかった。見れば、主屋と離れて、山の中腹にかけづくりになっている別館があって、主屋と廊下でつながれていた。あの別館へ一時身をかくし、手下どもが用意して来た衣裳と着換えよう――こう権は思った。そこで崖をよじ上り、廊下へ這い上がった。部屋の中へ駆け込もうとしたとたんに、

「……権よ! この耳を切っておくれ!」

という女の声が聞こえ、部屋から女が走り出して来た。

「…………」

「…………」

権之介――三国峠の権と松乃とはヒタと顔を合わせた。

谷からは尚お蘭の吹く竹法螺の音が聞こえて来ていた。

「権! ……権之介様、恨みある妾の耳を、さあお切りくださいませ!」