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あやしのやかた
怪しの館 短編
国枝 史郎
線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁
それを過ごすと無駄になる。外へ出たところをさらうなどと、悠長なことはしていられない。今夜だ、今夜だ、今夜のうちにさらえ」
「では」
といったのはもう一人の武士で、四十がらみで薄あばたがあり、やはり同じく浪人と見え、衣裳も大小もみすぼらしい。
「ではともかくも姿をやつし、屋敷の門前を徘徊し、様子を計って忍び込み、何んとか玉を引き上げましょう」
「それがよかろう。ぜひに頼む」――美男の武士はうなずいた。「しかし一方潜入の方も、間違いないように手配りをな」
「この方がかえって楽でござる」こういったのはやけどのある武士で、「人殺し商売は慣れておりますからな」
「それにさ」と今度は薄あばたのある武士が、「敵には防備もないそうで」
「うん」といったは美男の武士である。「それに相手そのものが、一向腕ききではないのだからの」
「とはいえ聡明な人物とか、どんな素晴らしい用心を、いたしておるかもしれませんな」
やけどのあとのある武士である。
「そうだそうだ、それは判らぬ」美男の武士は合槌をうった。「で、十分いい含めてな」
「よろしゅうござる。大丈夫でござる。……島路、大里、矢田、小泉、これらの手合いへも申し含めましょう。