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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁

青空文庫

が、それは駄目であった。十分用心をしていたのだろう、旗二郎の太刀を横に払い、翻然斜めに飛びのいた。

「方々!」

「うむ」

「ご用心!」

三人声をかけ合ったが、抜き身を構えると三方へ開き、旗二郎を中へ取り込めようとした。

「これはいけない」

と旗二郎、ポンと飛び返ると闇の中――以前隠れていた建物の角へ、ピッタリ背中を食っつけたが、「さあて、これからどうしたものだ」

突嗟の間に思案した。

見れば三人の敵の勢、大事を取るのか早速にはかからず、且つは秘密を保とうとしてか、無駄な掛け声をかけようともせず、タラタラと三本の太刀を揃え、ジリジリ……ジリジリ……と寄せて来る。

いずれも相当の手利きらしい。が、その中では真ん中にいる、体付きのきゃしゃな一人の武士が、どうやら一番未熟らしい。そのくせどうやらその人物が、彼らの仲間での首領らしい。花垣と呼ばれた人物らしい。

「よし」

と旗二郎うなずいた。「真ん中の奴を打ち取ってやろう」

で、闇中に構えながら、その男の隙を窺った。ところがそれが自ら、その人物に感じられたらしい。卑怯にもスルスルと退いた。

「こやつ」

と思った旗二郎、卑怯な態度に気を悪くしたか、二人の敵のいるのを忘れ不覚にもツツーと進み出た。