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あやしのやかた

怪しの館 短編

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《怪しの館 短編(あやしのやかた)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 81,915 字 · 165 頁

青空文庫

吉之助様は穏かに云われて、小粒を三つ四つ懐中から出され、

「これで機嫌を直してくれ、約束の他の当座の酒手じゃ」と、なだめるように申したことです。

五

ところがどうでしょうそうあつかっても、船夫たちは云うことを聞こうとはしないで、

「酒手が欲しくて云っているのではごわせん、深夜に坊さんを乗せるってことが……」

「船に坊主は禁物でしてね」

「それに深夜の坊主と来ては……」

「坊主は縁起が悪いんで」

と、どうしたものかだんだん声高に、坊主坊主とそう叫んで、岸の上の方を見上げるのでした。

さすがの吉之助様もこの様子を見られて、これはいけないと感じられたのでしょう、チラッと俊斎様へ眼くばせをされ、素早く刀の柄へ手をやられましたが、その時岸の上に女の姿があらわれ、

「船頭さん模様変えだよ、その人たちには用はないのさ。早く船を出しておあげ」

と、綺麗な声で云うのが聞こえて来ました。申すまでもなく例の女なのです。ところがどうでしょうそう云われましても、

「姐ごのせっかくのお言葉ですが、あっしたちゃア姐ごに頼まれたんではなく……」

「藤兵衛の親分さんにご依頼受けたんですからねえ……」