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あくいんねんのうらみ

悪因縁の怨

江見 水蔭

線上閱讀江見 水蔭《悪因縁の怨(あくいんねんのうらみ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 13,705 字 · 28 頁

青空文庫

と宗匠は早や酔って来た。

「この上申分無しだと、どこまで酔うか分らない。そうしたら江戸まで今日中には帰られまい」と若殿は未だ真面目であった。

茶店のお嬶はこの時口を出して。

「お客様、羽田には弁天様よりも美しいという評判娘がおりますでねえ」

「へえ、そいつは何よりだ。琵琶の代りに三味線でも引いてくれるかね」と市助も少々酔っていた。

「いえ、そんな意気筋の女では御座いません。船頭の娘ですがね」

「船頭の娘なら、頓兵衛の内のお船じゃア無いか。矢口もここも、一ツ川だが、年代が少し合わないね」と宗匠は混ぜ返した。

「お客様、お酒のお相手にはなりませんが、これから川崎まで船をお仕立てなさいますと、その娘がお供致しますよ」

「女船頭か」

「左様ですよ、大師様へお参りなさるなら、森下まで行きます。それから又川崎の渡し場まで入らッしゃるのなら、お待ち申しておりますよ。八町畷を砂ッ塵でお徒歩になりますより、矢張船を待たして置いてお乗りになれば、この風ですから、帆も利きます、訳無く行って了いますよ」

「成程なア、それは妙だ」

「川崎の本街道へお出ましになれば、馬でも、駕でも御自由で……」