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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《悪魔の紋章(あくまのもんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 頁

青空文庫

そして、薄暗くなった部屋に電燈をつけてから、異様な人物に何か合図をした。

すると、その人物が、いきなり外套を脱ぎ、帽子をとって、川手氏に向い、

「初めてお目にかかります。よろしく」

と頭を下げた。

川手氏は思わず椅子から立上って、あっけにとられたように、その人物を眺めた。アア、これはどうしたことだ。突然目の前に大きな姿見が現われたとしか考えられなかった。背恰好といい、容貌といい、髪の分け方、口髭の大きさ、着物から羽織から、羽織の紐や襦袢の襟の色までも、川手氏とそっくりそのままの人物が、眼前一二尺のところに佇んで、ニコニコ笑いかけているのだ。

「ハハハ……、如何です。これなら申分ないでしょう。僕でさえどちらが本当の川手さんだか迷うくらいですからね」

宗像博士は双生児のような二人を見比べて、得意らしく笑うのであった。

「この人は近藤という僕の知合のものです。さっきも申上げた通り、柔道三段の豪のもので、こういう冒険が何よりも好きな男です。

ところで近藤君、お礼のことは僕が引受けて、十分に差上げるから、一つうまくやってくれ給え。つまり今日から君が、川手家の主人なのだ。