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あくまのもんしょう

悪魔の紋章

江戸川 乱歩

線上閱讀江戸川 乱歩《悪魔の紋章(あくまのもんしょう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 151,280 字 · 301 頁

青空文庫

が、殺人鬼の毒手に斃れたことも承知の上、志願して博士の助手となったのである。

謂わば、この事件を目当てに傭われたようなものであったから、三重渦巻の指紋の主が、意外にも美しい女性と分り、その女性が不思議な失踪をしたことを知ると、林はもう夢中であった。飛んでもない見当はずれの想像説を組み立てては、博士に笑われて、頭を掻きながら引下る事も度々であった。

彼は、宗像博士を現代随一の名探偵として畏敬していた。実験室にとじこもっている博士の頭の中に、どんなすばらしい論理が組立てられているのかと、咳払いの聞える度に、影法師の動く度に、ただその事ばかり考えていた。

「林君、ちょっとここへ来てくれ給え」

突然ガラス戸の向うから博士の声が洩れて来た。林は待ち兼ねていたように「ハア」と答えて、勢いよく実験室へ飛び込んで行ったが、見れば、博士の顔に明るい微笑が漂っている。さては、何か妙案が浮かんだのに違いないと、林も思わずニコニコと笑った。

「林君、君は幽霊とかお化けとかいうものを怖がる質かね」

博士の藪から棒の質問に先ず面喰った。

「それはどういう意味でしょうか。まさか、先生が幽霊なんかを信じていらっしゃる訳ではないでしょうが……」