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あるひのおおいしくらのすけ
或日の大石内蔵助
線上閱讀芥川 竜之介《或日の大石内蔵助(あるひのおおいしくらのすけ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 8,830 字 · 18 頁
それを世間は、殺しても猶飽き足らないように、思っているらしい。何故我々を忠義の士とするためには、彼等を人畜生としなければならないのであろう。我々と彼等との差は、存外大きなものではない。――江戸の町人に与えた妙な影響を、前に快からず思った内蔵助は、それとは稍ちがった意味で、今度は背盟の徒が蒙った影響を、伝右衛門によって代表された、天下の公論の中に看取した。彼が苦い顔をしたのも、決して偶然ではない。
しかし、内蔵助の不快は、まだこの上に、最後の仕上げを受ける運命を持っていた。
彼の無言でいるのを見た伝右衛門は、大方それを彼らしい謙譲な心もちの結果とでも、推測したのであろう。愈彼の人柄に敬服した。その敬服さ加減を披瀝するために、この朴直な肥後侍は、無理に話頭を一転すると、たちまち内蔵助の忠義に対する、盛な歎賞の辞をならべはじめた。
「過日もさる物識りから承りましたが、唐土の何とやら申す侍は、炭を呑んで唖になってまでも、主人の仇をつけ狙ったそうでございますな。しかし、それは内蔵助殿のように、心にもない放埓をつくされるよりは、まだまだ苦しくない方ではございますまいか。