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ししょ

戦国武士道物語 死處

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《戦国武士道物語 死處(ししょ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 16,176 字 · 33 頁

青空文庫

二

こえの主はすこし蒼ざめた顔で家康の方をみあげていた、それは夏目吉信であった。

「ああ夏目か」

「次郎左衛門か」

人びとの面にはかすかに軽侮のいろが動いた。そしてたがいに「さもありなん」という眼つきでうなずきあった。次郎左衛門の子信次は全身をふるわせながら、骨も砕けよと双のこぶしを膝につき立てていた。

「よし、城の留守は夏目に申しつける、いずれも出陣の用意をいそげ」

家康のこえが大きくひびきわたると共に、列座の人びとは歓声をあげて立った。ときは元亀三年(一五七二)十二月二十一日黄昏すぎのことであった。

二

「なんたること。父上、これはなんたることでござりますか」

信次は色をうしなった唇をふるわせながら、噛みつかぬばかりにはげしく父を責めた。

「御主君の御運を賭するこのいくさに、もののふとあるものは誰しもご馬前の死をこそねがえ、みずから留守城のまもりを名乗りいで、好んでだいじの合戦におくれるとは、そもいかなるご所存でござります」

吉信は答えなかった。

ここは浜松城玄黙口の矢倉のうえである、必死を期した徳川八千の軍勢は、大将家康の本隊と共に、霜こおる夜をついて、いま粛々とみかたが原めざして出陣して行った。