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たんていしょうせつだんのしょけいこう
探偵小説壇の諸傾向
平林 初之輔
線上閱讀平林 初之輔《探偵小説壇の諸傾向(たんていしょうせつだんのしょけいこう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 5,887 字 · 12 頁
『心理試験』の中におさめられたもの以後では、私は、「屋根裏の散歩者」「一人二役」「踊る一寸法師」などを読んだに過ぎない。その中で、着想に全くの独創を示しているものは、何といっても「屋根裏の散歩者」である。あんな空想をえがいた人間は、恐らく日本に他にはなかろうと思う。
しかも、氏が、『文藝春秋』で自白しているところによるとあれを書くまえには、じっさい自分の家の天井裏へ上がって実験したということである。フローベルが『サランボオ』をかくのにアフリカの地をふんで実地踏査をしたというような話は他にもたくさん例があるであろうが、天井へ上がって、板のすきまから、下の部屋をのぞいた人は恐らく世界に例がなかろうと思う。
「一人二役」や「踊る一寸法師」などは、着想においては、それほど奇抜ではなく、誰でも思いつける程度のものであるが、それをあれだけ念入りに、巧みに、書きこなす手腕は、大抵の人には期待できないことである。「一人二役」などは、随分ふざけたもので、最後のさげも見えすいているし、書いてあることは不自然そのものであるが、それをよくあれだけ精巧に途中で投げ出さずに組み立てていったものだと、その点にはほとほと感心する。