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ぶんがくのたいしゅうかろんについて

文学の大衆化論について

宮本 百合子

線上閱讀宮本 百合子《文学の大衆化論について(ぶんがくのたいしゅうかろんについて)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 7,505 字 · 15 頁

青空文庫

今日云われている文学の民衆化のことは、嘗て屡々くりかえされて来た純文学対大衆文学の問題ではなく、文学そのものの全体的な重点の移動がもくろまれているところに重大な歴史的意味をもっている。従って、大衆と云い、民衆と云うその目安がどこにどのように置かれるかということによって、将来の文学そのものの本質が左右される。文学が、単に低きについたことにならされぬように、作家は警戒し努力しなければならないと思う。従来のような生活ぶりの作家たちが、自身の内にある所謂文壇的、文学的関心以外の諸要素、家庭的な感情だとか、近所合壁への義理だとか、些細な日常利害だとかを、直ちに自身の中の民衆的なるものだとすれば、それは大きい誤りなのである。

この点について、私は特に興味ふかく思うのであるが、ひところ或る種のプロレタリア文学運動の活動家が人間性というものの理解について陥り勝ちであった二元的見解をひっくりかえしたようなものが、今日まで極めて文壇的な雰囲気、折衝、感情錯綜の中に生活して来ている作家その他の心持の中にあるらしいことである。

この二元的な人間性の見かたは、プロレタリア文学にあっては、彼も亦人間であった、という風に闘争的な義務、規律、英雄主義に対置してあらわれ、その人間性の抽象化は非現実な現実の見方とされて来ているのである。