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ぶんがくいぜん
文学以前
豊島 与志雄
線上閱讀豊島 与志雄《文学以前(ぶんがくいぜん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 19,171 字 · 38 頁
――銀の羽子の鳥を見たよ。
――そんなのがいるものかい。
――嘘か本当か、伴の男に聞いてみなさい。
――おう伴の人、銀の羽子の鳥を見たとか、御主人が云うのは本当かね。
――それは違うよ。私は銀の翼の鳥を見たが、その鳥のことでもあろう。
――バルバリー、タルタリー、パリーからのお戻りか。あちらに何かあったかね。
――ぼうぼう燃えてる池を見たよ。
――そんなのがあるものかい。
――嘘か本当か、伴の男に聞いてみなさい。
――おう伴の人、ぼうぼう燃えてる池を見たとか、御主人が云うのは本当かね。
――それは違うよ。私は尻尾の焦げた鯉の泳ぐを見たが、その池の鯉でもあろう。
こんな調子で長く続くのである。而もこれは民話というより、一種の民謡で、歌うように語られるのである。
こんなことを肥った年とった女が、日当りのよい庭などで、編物をしながら、或は糸車を廻しながら、孫でもあろう子供に歌ってきかしている、そうした光景を想像するのも、時にとっては一興である。
F
宮本武蔵政名が、仇敵佐々木劔刀斎岸柳の動静を探らんがため、変名して木下家の足軽に住み込んでいた頃、この木下若狭守の居城、播州姫路の城の、五重の天主閣の絶頂には、嘗て羽柴筑前守秀吉がそれを造営した頃より、故あって、高野師直の娘刑部姫の霊が祀られてあって、