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いけぶくろのかい

文藝別冊[総特集]岡本綺堂

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《文藝別冊[総特集]岡本綺堂(いけぶくろのかい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,671 字 · 149 頁

青空文庫

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半七 わたくしが半七でございます。

十右衛 手前は大和屋十右衛門、どうぞ御見識り置きをねがいます。

半七 どうぞお楽においで下さい。

十右衛 はい、はい、有難うございます。

(十右衛門は自分の用向きを云い出し兼ねて、もじもじしている。おみのは茶を持っていず。)

十右衛 どうぞもうお構い下さいますな。

(おみのは台所に入る。)

十右衛 (やはりもじもじして。)まことに結構なお住居でございますな。

半七 野郎共が大勢ごろごろしていて男世帯も同様ですから、家のなかは散らかし放題、一向にだらしがございません。

十右衛 いえ、よくお綺麗に片附いて居ります。

(十右衛門はそこらを見まわしながらやはりもじもじしている。半七は何を云いに来たのかと、相手の顔をながめている。)

十右衛 よいお天気がつづきまして、まことに仕合せでございます。

半七 ことしは余寒が強くないので大きに楽でございました。もう直きに彼岸が来る。雛市がはじまる。世間もだんだん陽気になって来ましょう。

十右衛 左様でございます。空の色などももうめっきりと春めいて参りました。

(十右衛門はいつまでももじもじしているので、半七は少し焦れったくなって、煙管で火鉢の縁をぽんぽん叩く。