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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁(くろかべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,070 字 · 143 頁

青空文庫

皆戦いた。

ヒイと尾を微かに、その声が切れた、と思うと、雨がひたりと止んで、また二度めの声が聞えた。

「鳥か。」

「否。」

「何だろうの。」

祖母と、父と、その客と言を交わしたが、その言葉も、晃々と、震えて動いて、目を遮る電光は隙間を射た。

「近い。」

「直き其処だ。」

と云う。叫ぶ声は、確かに筋向いの二階家の、軒下のあたりと覚えた。

それが三声めになると、泣くような、怨むような、呻吟くような、苦みくかと思う意味が明かに籠って来て、新らしくまた耳を劈く……

「見よう、」

年少くて屈竟なその客は、身震いして、すっくと立って、内中で止めるのも肯かないで、タン、ド、ドン! とその、其処の蔀を開けた。――

「何、」

と此処まで話した時、常さんは堅くなって火鉢を掴んだ。

「その時の事を思出すもの、外に何が居ようも知れない時、その蔀を開けるのは。」

と民也は言う。

却説、大雷の後の稀有なる悲鳴を聞いた夜、客が蔀を開けようとした時の人々の顔は……年月を長く経ても眼前見るような、いずれも石を以て刻みなした如きものであった。

蔀を上げると、格子戸を上へ切った……それも鳴るか、簫の笛の如き形した窓のような隙間があって、衝と電光に照される。