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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁(くろかべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,070 字 · 143 頁

青空文庫

六

」

と常さんは机の向うに居直った。

洋燈が、じいじいと鳴る。

その時であった。

六

二階の階子壇の一番上の一壇目……と思う処へ、欄間の柱を真黒に、くッきりと空にして、袖を欄干摺れに……その時は、濃いお納戸と、薄い茶と、左右に両方、褄前を揃えて裾を踏みくぐむようにして、円髷と島田の対丈に、面影白く、ふッと立った、両個の見も知らぬ婦人がある。

トその色も……薄いながら、判然と煤の中に、塵を払ってくっきりと鮮麗な姿が、二人が机に向った横手、畳数二畳ばかり隔てた処に、寒き夜なれば、ぴったり閉めた襖一枚……台所へ続くだだっ広い板敷との隔になる……出入口の扉があって、むしゃむしゃと巌の根に蘭を描いたが、年数算するに堪えず、で深山の色に燻ぼった、引手の傍に、嬰児の掌の形して、ふちのめくれた穴が開いた――その穴から、件の板敷を、向うの反古張の古壁へ突当って、ぎりりと曲って、直角に菎蒻色の干乾びた階子壇……十ばかり、遥かに穴の如くに高いその真上。

即ち襖の破目を透して、一つ突当って、折屈った上に、たとえば月の影に、一刷彩った如く見えたのである。

トンと云う。

と思うと、トントントンと軽い柔かな音に連れて、褄が揺れ揺れ、揃った裳が、柳の二枝靡くよう……すらすらと段を下りた。