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くろかべ

文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁

泉 鏡花

線上閱讀泉 鏡花《文豪怪談傑作選 泉鏡花集 黒壁(くろかべ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 72,070 字 · 143 頁

青空文庫

」

と面を正して言った。

「正面の、左右の聯の偈を……失礼ながら、嬉しい、御籤にして、思の矢の的に、線香のたなびく煙を、中の唯一条、その人の来る道と、じっと、時雨にも濡れず白くほろほろとこぼれるまで待ちましたが、すれ違い押合う女連にも、ただ袖の寒くなりますばかり。その伝法院の前を来るまでは見たのですのに、あれから、弁天山へ入るまでの間で、消えたも同じに思われました。」

宗参の眉が動いた。

「はて、通り魔かな。――或類属の。」

「ええ通り魔……」

「いや、先ず……」

「三度めに。」

「さんど……めに……」

「え。」

「なるほど。」

「また、思いがけず逢いましたのが、それが、昨年、意外とも何とも、あなた!……奥伊豆の山の湯の宿なんです。もう開けていて、山深くも何ともありません、四五度行馴れておりますから、谷も水もかわった趣と云ってはありませんが、秋の末……もみじ頃で、谿河から宿の庭へ引きました大池を、瀬になって、崖づくりを急流で落ちます、大巌の向うの置石に、竹の樋を操って、添水――僧都を一つ掛けました。樋の水がさらさらと木の刳りめへかかって一杯になると、ざアと流へこぼれます、拍子を取って、突尖の杵形が、カーン、何とも言えない、閑かな、寂しい、いい音がするんです。