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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

うまうまと、監禁されたのである。だが、殺しもせず、切腹も強いられなかった。こう強圧的な処分はしたものの、備中守にも龍興にも、内心憚られる人間がひとりいた。

それは、安藤伊賀守の娘聟――菩提山の城主竹中半兵衛だった。病身なので、酒ものまず、また始終一言も発せず、席に沈湎とひかえていたからであった。

病骨とはいえ、半兵衛重治の日頃を知っている者は、舅の安藤伊賀守が監禁された、と知っては、

(よも、このままではすむまい)

と、見ていた。

ところが、やがて半兵衛は、面色もうごかさず、

(弟。お暇しようか)

と、傍らの実弟久作を促して、静かに席を立ち、水の引くように、城を退ってしまった。

龍興は、後で、

(なぜ彼も捕えなかったか)

と、日根野備中を責めたが、事実は、半兵衛の立ち方があまりにも静かで、まるで女性の如くしとやかだったので――備中守ばかりでなく、並居る他の諸将も、気をのまれたというのか、つい放心したまま見送ってしまったのであった。

(必定――怨みをふくんで、謀叛するにちがいない。備えをなさぬうち、菩提山をとり囲んで、彼奴の城を召し上げてしまえ)

龍興の命に、日根野備中は、すぐ稲葉山の兵をひいて、不破郡の岩手へ向った。