輕鬆讀懂日語經典作品
ja-reading.com
輕鬆讀懂日語,輕鬆閱讀日語。線上閱讀日語經典作品。支援在閱讀過程中顯示假名、查詢生詞、翻譯句子。
しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「そんな苦手へ向って、こんな苦労をなぜするか」
藤吉郎は、それも自分へ質問してみた。
翌日、岩手を立ち、晩は、南宮山の麓村に一宿し、そこへただ一名の供の佐屋桑十も残して、まったくただ一人、いよいよ栗原山へ登りにかかった日も、途中幾たびか、
「――何でそんな苦手な人間を、無理に山を降らしに出かけるか」
を考えてみた。
要するに藤吉郎自身、藤吉郎という人間をよくよく検めてみると、途方もない大慾の容器なのである。喜怒哀楽とよぶ愚かなものはみんな盛り上げている盤である。花鳥風月にも、恋慕の情にも、骨肉の愛にも、ひとしく心を動かし涙を催さずにいられない大凡物なのである。
この大慾の凡物を、持って生れて、誰がもて余しているかといえば、他人ではない。彼自身である。――そこで彼は、持て余すまい、よく生かそうと、自己の天性を自己の努力で錬冶している。鞴の火みたいな熱意を不断にそれへかけている。――今、登っている栗原山もその熱意が踏んでゆくのである。
――が、それだけで彼の大慾は完成できない。藤吉郎はそれを知っている。自分の求めているのは、自分とまったく反対な名利なき人物であった。