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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

自分の意思を、自分に代って述べそうな者は、信長の眼で、この大勢の家中にも、彼しかなかったのであった。

「柴田様、林様、その他、重臣方の御意見は、さすがに事理分明、ごもっともな御意見と拝聴いたしました」

藤吉郎は、そう云いながら、席から少し摺り出して、信長のほうへ、両手をつかえていた。

「――なれど、人の思慮に及ぶ程のことならば、敵も測って、対策をいたしますゆえ、兵法とは申されませぬ。敵の予測し得ない上に出て戦い、敵の思慮の及ばぬ所に備えをするのでなければなりません。――その点から、洲股の築砦は、断じて、打つ手だと思います。水を恐れては、河に築城はできません。敵を恐れては、敵国へ討ち入ることはできません。誰の眼にも、至難、無謀と見えることをも、至難でなく、無謀でなく、人智と誠をもって、行い通してゆくところに、御勝利があるものと存じます」

「ウむ。……むむ!」

信長は、何度もうなずいた。

そしてなお、黙り返っている一同の上を見わたして、今度は、意見を問うのではなく、厳命するようにいった。

「美濃へ打ち入らんには、洲股に一塁を築いて足がかりとする他に兵法はない。