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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「そっと、お会い申したいが」
と、先から足を運んで来たことさえ、実に、天来の訪れといってよい。
客は、細川藤孝だった。
室町管領家の系流という名門の人である。光秀は驚いて、自身で出迎え、
「かかる茅屋へ」
と、恐懼して、席を拝した。
藤孝は、気がるく、
「園阿どのと、お親しいそうでござるな。実は、上人にお会いした折、金ヶ崎の御城下へ参られたら、ぜひ、明智殿とお会いなされと、其許のおうわさをよく承っていたので、御城内へ上がるたび、気をつけていたが、近頃はとんと御閑役の由で、お眼にかかる折もなく、きょうはふと徒然のまま、お訪ねしたわけでおざる。……どうぞ、お構い下されぬように」
と、温厚のうちにも、初対面から親しみのあることばだった。
藤孝の人品は、光秀の気もちに、しっくり合った。藤孝には、名門の品位と、知識人の香りがした。久しく人らしい人に会わないと嘆じていた彼は、この賓客に、心からの歓びを寄せたが、それにしても、藤孝の来訪は、いったい何事かしらと、心のうちで疑った。
細川藤孝は、晩年、幽斎とも号して、細川藩にとって中興の祖ともいえる業績を遺した人物である。