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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁

青空文庫

「――会って来たが、なるほど、聞きしに勝る人品だ。大した器量人だ」

「わしもきのうお目にかかってきたが、実に偉ぶらないお方で、旧知のごとくもてなして下すった」

「四海の騒乱も、あの方が出たからには、これで治まるだろう」

ひと月前までは、にも出なかったことばを、俄然、信念化して、賞め称える言葉をさがし合った。

信長は、一日ましに昂まってゆく自分への声望に、むしろ驚いたほどである。

そして、民心というものを、種々な形で、眼に見ているここちがした。

たとえば。

彼は、宿年の志でもあったし、父信秀の教育も、身にしみているので、洛内に入ると、何よりも先に、朝廷の門に伺候して、微衷の伝奏を仰ぎ、同時に、黄金百枚、絹二百匹、綿三百把、米千五百俵の献上を願い出て戻って来たところ、忽ち、

「信長は、勤王の志が篤い」

「彼こそは勤王の武将である」

などと、それに対する過大なうわさが聞え渡ったので、ただ当然なことを、しかも早速にして戻ったに過ぎない信長は、何か非常に世評に対して面目ない気がした。

――と、思うと一方には。

なお、熾烈な敵もあった。

大魚が池中にはいったので古い池水は氾濫した。