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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
「そうか」
と、いっただけで、大して賞めもしなかった。
信長の顔いろから察しると、余りに彼の働きは、
「出来し過ぎておる」
と、思っているような容子であった。
殊勲は殊勲としても、そこには程度がある。誰が認めても、藤吉郎の大功は、否定すべくもない大功にちがいないが、その上にも信長が、
「よくした。出来した」
と、褒めそやしたら、先に八百余の兵を死なせて、敵の数倍にあたる軍勢で攻めに攻めても、陥すことのできなかった池田、佐久間、森などの諸将は、何の顔容あって信長にまみえんや――という面目もない立場になってしまう。
藤吉郎もまた、信長以上、そういう諸将の気もちには、敏感なほうである。――で、彼はその報告に際しても、それを自分の考えでしたこととはしなかった。信長の命に依ってしたように、後から云いたした。
「おいいつけの如く、諸事、取り運んだつもりでございますが、何分、急な御秘命、不手際のところは、お宥しを仰ぎまする」
と、詫びて退った。
諸将のほかに、家康も信長のそばにいた。家康は、
「……むむ」
と、肚のそこで、嘆息しながら、藤吉郎の退ってゆく後ろ姿を見入っていた。