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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
休むならいつだっていいさ」
馬をあずけ、隊伍の間を颯爽と通って行った犬千代の耳にも、士卒達のそんな声が入った。
「やあ、犬千代どのか」
藤吉郎は見かけるなり、馬上からざくと飛び降りて、自分からも歩み寄った。
「犬山の方面はどんな情勢ですな」
先に問われてしまったので、犬千代も何か急に用あり気であったが、
「まだ片づかぬ。一時、退軍せいとの仰せに、軍を退いて空しゅう、帰って来た」
と、手短に告げた。
その犬山の方面――にも先頃から織田家の内憂があった。
犬山の城主下野守信清は、織田一族だが、信長に対して反抗を持ちつづけて来た。葉栗郡の和田とか、丹羽郡の中島豊後とか、清洲で用いられない不平組を語らって、叛旗をひるがえし、密かに美濃の斎藤家へ内通していた。同族だけに、始末のわるい存在なのである。
で、信長はこれを討たんと決心したが、後方から無限に美濃の斎藤方が援けるので、それに向った岩室長門が戦死を遂げたり、同族いたずらに血を流すのみで、戦のけじめはつかなかった。
「そうか。この際、一時陣を退けと御命令になったか。――それは賢明な御分別だ」
藤吉郎は、清洲の空を見ながら呟いた。