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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,353 字 · 371 頁
対岸の東美濃から、小手をかざして見ている斎藤方の兵は、またもかと、笑止がっていた。
「四度目がやって来たぞ」
「ほ。……性懲りもなく」
「まあ見ていてやれ」
「誰だ、こんどの亡者の奉行は。敵ながらあわれなもの。名だけでも覚えておいてやろう」
「木下藤吉郎とかいうそうだが……聞いたこともない」
「藤吉郎。それなら猿の方が通りがよい。織田家の軽輩で、多分今でも、五十貫か六十貫そこそこの足軽小頭のはずだが」
「そんな微賤なやつが奉行か。さては敵も本気じゃない」
「計略か」
「そうだと思う。ここの一点に美濃の注意をひきつけておいて、他の方角から突として渡り越えて来るという作戦もある」
いくら対岸の工事を見ていても、本気にされないのは、むしろ美濃方の兵自身であった。
ここ約一ヵ月。
蜂須賀一族の精猛をひいて、任地につくや否、すぐ着工し始めてから、二、三度の大雨はあったが、むしろ材木筏をながすによく、洲は一夜に洗い流されても、
「なんの」
とばかり気を協せて、太陽の曇りだす日が先か、ここに一郭の盛り土を築き上げてしまうのが先か、天力勝つか、人力勝つか、とばかり二千の野武士は、寝食もわすれて働いていた。