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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

(おれの援助がなければ、徳川家はいま滅亡のほかはないのだ)

などと思い上がらせるような弱体ぶりは示さなかった。

むりに彼以上に出ようともしなかったが、弱小国でも、眼前に危急を見ていようと、彼以下には、身を置かない。初めて清洲の城で、信長と会見した弱冠から、今日にいたるまで、五分と五分を持していた。

強右衛門の来たことを、そこで今、侍臣から耳にしても、彼は至って、平然たる面のまま、

「そうか。むむむ」

と、いったきりであった。

信長の小姓が、信長仕込みの小舞を舞っているのを、熱心に見入っていた。

やがて、一節の舞もすみ、鼓の音もやむと初めて、

「織田どの」

と、新たに杯を洗って、

「ちょっと、中座させていただく、長篠からの使いが今、表まで着いて控えておるそうですから」

と、断って立った。

そこは、静かに出たが、

「貞能、どこにおる?」

と、室外へ来て、仄暗い廊下へ出ると、声はすでに、心のそこのあわただしさを現わしていた。

「おッ、殿」

「貞能か。長篠より来たとある鳥居強右衛門とやらに、城中の様子つぶさに、自身聞きとりたい。どこに控えておるか」

「いや、召し連れましょう」