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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

と、誰も解せない面持ちであった。

信長は、その間に、堂の横手に見える池へ寄って、暑熱に渇ききッた足軽たちが、争って、掌に掬った水を飲んでいるのを遠くながめ、

「これ、勘助。あれを叱って来い。――水を飲んではならぬと、あの者たちを追い払え」

と、いった。

丹羽長秀の息子の勘助が、そこへ歩み寄って、

「お目障りじゃ。去れッ」

と、一喝すると、足軽たちは、愕いた様子で、みなどこかの木蔭へ隠れこんだ。

丹羽勘助の父五郎左衛門長秀は、信長のかたわらにいたが、怪しんで主君にたずねた。

「桶狭間の時といい、先頃の長篠の折と申し、いずれも五月の頃で、しかも暑さは、今日どころではなく、さむらいどもは、腐り水であろうと、泥水であろうと、孑孑を掌に掬って、そのまま、飲んでは戦っておりました。殿ですら、そういう悪水の味は御存じでしょうに、なぜ、この山の上の池水に限って飲むなと、お叱りでございますか」

「ははは。五郎左にも似合わんことを問う。戦場の体は金剛身じゃ。平常の装いとなれば体も平常に回る。戦場では中らなかった水でも、こういう時に不用意に飲めば中るおそれがある。彼らとて、事なき日に病などで斃れたくはなかろう。