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しんしょたいこうき

新書太閤記

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁

青空文庫

おゆるし賜わりましょうか」

「もとより、それが出来れば、大きな功だが、……万一? ……十中の八、九はむずかしいと見なければならぬが……そのときは」

「一死あるのみでございまする」

半兵衛は眉もうごかさずに答えた。それは、心にない者が、強がっていうのとちがって、いかにもすずやかに聞えた。

明石景親は、宇喜多家の被官で、八幡山の城をかため、たとえ三木城は陥し得ても、次の大敵たることはいうまでもない。

秀吉はいま、三木城ひとつすら陥しかねている苦境にはあった。けれど彼は、決して、眼前の攻城だけに、焦慮したり、囚われてはいないのである。

ここは戦いの一局部に過ぎない。秀吉が策すところは中国全体の攻略にある。半兵衛の計を容れて、ひそかに、八幡山の明石一族へ、書を送ったり、使いを求めたり、あらゆる外交折衝をこころみているのも、そのためにほかならない。

「参ってくれるか」

「参りましょう」

秀吉は、彼のすずやかな決意を見ても、なお、幾分のためらいを示していた。

いま、単騎備前へ入ることは、多くの危険が予想されるからだった。

途中の危険は越えられても、もし先の明石景親と会って、交渉が不調に終るときは、敵が半兵衛を生かして返すやいなやも分らないし、また半兵衛自身も、生きて空しく帰って来るかどうか――秀吉には心許なく思われる。