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しんしょたいこうき
新書太閤記
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新書太閤記(しんしょたいこうき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 197,228 字 · 394 頁
客殿に待たせてある直家のところへ来て、秀吉は気のどくそうに告げた。
「御微恙かの」
直家は不愉快な顔をした。
降を乞うとはいえ、決して信長に憐れを求めているのではない。備、作二州の強兵と一族郎党はなお健在であるのだ。――ただ秀吉の熱情と、官兵衛孝高の説く理に従って、好まざる戦を避けようとするに過ぎない。
「――何事だ。この冷遇は」
口にこそ出さないが、憤然、そう思わずにいられなかった。
これ以上の屈辱はしのび得るところでない。急遽、国へ立ち帰って戦陣のあいだに挨拶をし直そう! 彼の眉は、はっきりそういうものを漂わせながら、
「……いや何。おさしつかえとあれば、またの折といたそう。ひとまず、城下へ降って」
旅舎は秀吉の胆いりで、桑実寺の奥院をあててある。さっそく直家はそこへ戻って、式服を解くとすぐ云い出した。
「夜に入らぬうち、当所を立って、こよいは洛内に一泊する。そして明朝は、勝手ながら、直家のみ、ひと足先に帰国いたせば、悪しからず……」
「や。それはまた、なぜですか。まだ右大臣家との御対面もすまぬうち」
「もうお目にかかる気はござらぬ」
と、直家は、初めて、色にもことばにも、感情をあらわした。